地方で事業承継する方法は?手順・進め方や注意点を解説

コラム

公開日:2026/05/28

更新日:2026/05/28

地方の中小企業では今、「後継者が見つからない」という悩みを抱える経営者が増えています。後継者が決まらないまま廃業を検討するケースは珍しくなく、長年地域を支えてきた企業が姿を消していくことは、地域経済にとっても深刻な問題です。

事業承継には、親族への引き継ぎや従業員への承継、M&Aによる第三者への譲渡など、複数の選択肢があります。地方企業の場合は地域特有の事情も絡むため、自社の状況や目指す方向性に合った方法を選ぶことが重要です。

この記事では、地方で事業承継を進める際の方法・手順・注意点から、活用できる支援制度までお伝えします。

後継者探しに悩む経営者の方はもちろん、「地方企業の経営を引き継いでみたい」と考えている方にも参考にしていただける内容です。ぜひ最後までご覧ください。

地方企業の事業承継が求められている背景

人のいないオフィスの風景から、地方企業の後継者不足や事業承継の課題をイメージした画像

地方の中小企業では今、後継者不足の問題が深刻さを増しています。高齢化と人口減少が進む地方では、この課題が都市部以上に切実な形で表れており、地域経済の行方を左右するテーマとして注目されています。

経営者の高齢化と後継者不足の深刻化

帝国データバンクの「全国企業『後継者不在率』動向調査(2025年)」によると、2025年時点の後継者不在率は50.1%と、依然として半数以上の企業で後継者が決まっていない状況が続いています。都道府県別では、秋田県が73.7%と全国で最も高く、全都道府県の中で唯一70%を超えました。地方では若年層の都市部への流出が続いているため、身近に後継者を見つけることが難しい傾向にあり、全国平均を大きく上回る地域が多く見られます。

後継者不在のまま廃業を迫られる企業が増える中、外部から経営を引き継ぐ人材への期待はこれまで以上に高まっています。「まだ先のこと」と先送りにしてしまう経営者も多く、早期に承継の準備を始めることの重要性が年々増しています。

参考:全国「後継者不在率」動向調査(2025年)

地方企業の廃業が地域経済に与える影響

後継者が見つからないまま廃業に至ることは、その企業だけの問題にとどまりません。地域の雇用が失われ、取引先や関連業者にも影響が及ぶため、地元経済全体へのダメージは想像以上に広がることがあります。特に地方では、一つの企業が物流・農業・建設・介護といった生活インフラを支えているケースも多く、廃業の影響は地域住民の生活に直結します。

裏を返せば、こうした企業を引き継いで経営者になることは、地域社会への貢献という大きな意義を持ちます。事業承継は単なるキャリアチェンジではなく、地域の未来を担う選択肢の一つといえるでしょう。

地方で事業承継する主な方法

事業承継の方法は大きく4つに分けられます。それぞれに特徴やメリット・デメリットがあるため、自分の状況や目指すキャリアに応じて最適な方法を選ぶことが大切です。各方法の詳細については「事業承継の方法」に関する専門記事も参考にしてください。

  • 親族内承継
  • 従業員承継
  • M&Aによる第三者承継
  • サーチファンドを活用した事業承継

親族内承継

親族内承継とは、経営者の子どもや配偶者など家族・親族が経営を引き継ぐ方法で、日本の中小企業では長年にわたり最も一般的な承継方法とされてきました。地方では若い世代が都市部に出ていることも多く、親族内で後継者が見つからないケースが増えているのが現状です。

承継先を探す上で知っておきたいのが、親族内承継が繰り返された結果、株式が複数の親族に分散しているケースがあるという点です。この場合、M&Aによる承継を進める際に株主間の合意形成が必要になるなど手続きが複雑になることがあるため、承継先を検討する際には株式の保有状況も確認しておくことをおすすめします。

従業員承継

従業員承継とは、長年会社を支えてきた役員や従業員が経営を引き継ぐ方法です。業務内容や社内の人間関係を熟知しているため、承継後の経営をスムーズに進めやすいという強みがある一方、株式取得のための資金調達が課題になりやすい点があります。

M&Aによる第三者承継

M&Aによる第三者承継とは、外部の企業や個人に事業を譲渡する方法です。譲受企業にとっては、自身の事業シナジーを発揮できますし、譲り受ける個人にとっては、既存の顧客基盤・従業員・ノウハウをそのまま引き継げるため、ゼロからの起業に比べてリスクを抑えやすいという利点があります。

個人M&Aも近年は地方でも活用が広がっており、経営者を目指す個人にとって現実的な選択肢として注目されています。

サーチファンドを活用した事業承継

サーチファンドとは、経営者を目指す個人(サーチャー)が投資家や支援機関のサポートを受けながら承継先企業を探し、経営権を取得して事業を引き継ぐ仕組みです。

日本では支援機関がサーチャーに伴走する「アクセラレータ型」が主流で、兼業でサーチ活動を始められるケースもあるため、現職を続けながら準備を進められる点が特徴です。

サーチファンドについては下記の記事で詳しく解説しています。

関連記事:サーチファンドとは?仕組みや従来のファンドとの違い・メリットを解説

地方企業を引き継ぐための手順

地方企業の事業承継における手順や進め方を示したステップ形式のイメージ

ここからは、地方企業の経営者になることを目指す方向けに、承継を進める際の基本的な流れを解説します。

「どんな企業を探せばいいか」「承継までに何をすべきか」といった疑問を持っている方は、ぜひ参考にしてください。

自分のキャリア・強みを整理する

まず、これまでの職務経験・専門知識・マネジメント経験など、自分がどのような価値を企業にもたらせるかを整理します。「自分はどのような組織で、どのような役割を担ってきたか」を振り返ることで、自分に合った業種・規模・地域のイメージが具体化しやすくなります。

なぜ地方で経営者を目指すのかという動機を言語化しておくことも、承継先の経営者や従業員との信頼関係構築に役立ちます。

承継先企業を探す(サーチ活動)

自分の強みと目指す方向性が固まったら、具体的な承継先企業の探索に入ります。M&Aマッチングサービスや事業承継・引継ぎ支援センターの活用に加え、地域金融機関のネットワークを通じた紹介が有効です。

特に地方企業は表に出ていない案件も多く、地元の金融機関や支援機関と連携することで、一般には公開されていない承継候補企業と出会えるケースもあります。サーチファンドを活用する場合は、ファンド運営会社がこの段階からサポートを行います。

対象企業の調査・交渉を進める

候補企業が見つかったら、財務状況・事業内容・従業員構成・取引先との関係など、企業の実態を詳しく調査します。デュー・ディリジェンスは承継後のリスクを把握するために欠かせないプロセスで、数字だけでは見えない部分を丁寧に確認することが重要です。

調査と並行して譲渡条件や引き継ぎスケジュールについて交渉を進めますが、実務面は専門家のサポートを積極的に活用することをおすすめします。

事業承継計画を策定する

交渉がまとまったら、引き継ぎ期間・株式や資産の移転時期・承継後の経営方針などを盛り込んだ事業承継計画を作成します。承継直後の100日間は経営の方向性を示す重要な期間とされており、具体的なアクションプラン(100日プラン)を事前に準備しておくと、スムーズなスタートを切りやすくなります。

税理士・中小企業診断士・M&Aアドバイザーなどの専門家に関与してもらうことで、抜け漏れのない計画にまとめやすくなります。

株式や資産の移転手続きを行う

承継計画が固まったら、株式・事業用資産・許認可などの法的な移転手続きを行います。株式譲渡契約や事業譲渡契約など、承継方法によって必要な手続きが異なるため、税理士や弁護士へは早めに相談しておくと安心です。

許認可や各種契約の名義変更など見落としがちな手続きも多いため、チェックリストを作成して漏れなく対応できるよう準備しておきましょう。

地方で事業承継する際の注意点

地方企業を引き継ぐ際は、都市部の企業とは異なる環境や人間関係の中で経営をスタートさせることになります。後継者として地域に受け入れてもらいながら、事業を安定・成長させるために意識しておきたいポイントを紹介します。

事業の将来性を地域の市場環境も含めて確認する

承継先を選ぶ際は、現在の業績だけでなく承継後の将来性を見極めることが重要です。地方では人口減少による市場縮小が都市部よりも早いペースで進んでいるため、現時点で黒字経営であっても将来的な需要が変化する可能性があります。

基幹産業の衰退・競合他社の動向・人手不足など地方特有のリスクを事前に把握した上で、自分の強みを活かして事業をどう成長させられるかを具体的にイメージしておくことが大切です。

従業員や取引先との関係構築を意識する

外部から経営者として入る場合、従業員や取引先との信頼関係をゼロから築いていく必要があります。従業員に対しては、雇用条件や今後の経営方針を早い段階で丁寧に説明し、不安を取り除くことが重要です。

取引先に対しても、承継後は早めにあいさつに出向き、顔の見える関係を築くことで、長期的なビジネス関係の維持につながります。

地域のコミュニティとの関係を引き継ぐ意識を持つ

地方企業では、商工会や地域のイベントへの参加、地元金融機関との関係など、ビジネスの枠を超えた地域とのつながりが経営を支えていることがあります。外部から来た後継者の場合、こうした地域コミュニティへの参加を積極的に続けることが従業員や地域住民からの信頼獲得に直結します。

前経営者にも承継後しばらくは地域との橋渡し役として協力してもらえるよう、引き継ぎの段階から関係を大切にしておくことをおすすめします。

早めに専門家や支援機関に相談する

地方での事業承継を検討し始めたら、一人で抱え込まずに早めに専門家や支援機関へ相談することをおすすめします。「まだ具体的なイメージがない」という段階でも、相談することで方向性が明確になることがあります。

主な相談先としては、以下のような窓口があります。

  • 事業承継・引継ぎ支援センター(各都道府県)
  • 商工会議所・商工会
  • 地方銀行・信用金庫

支援機関によっては無料相談や専門家派遣制度を設けているところもあるため、費用面での心配がある場合もまず気軽に問い合わせてみてください。

地方の事業承継で活用できる支援制度

地方の事業承継で活用できる支援制度や相談の様子を表した打ち合わせのイメージ

事業承継をスムーズに進めるために、国が用意している支援制度を活用することも可能です。後継者として承継に取り組む方にとって、費用負担の軽減や専門的なサポートを受けられる制度が整っています。

事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業庁が全国47都道府県に設置している公的な相談窓口です。後継者を探している企業と経営者を目指す個人のマッチング支援も行っており、承継先を探しているサーチャーにとっても活用しやすい窓口です。

相談は無料で受け付けており、相談内容に応じて税理士や中小企業診断士などの専門家を紹介してもらえる場合もあります。

参考:事業承継・引継ぎ支援センター
参考:中小企業庁「事業承継」

事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継やM&Aに伴う費用の一部を国が補助する制度です。専門家への相談費用・M&Aの仲介手数料・承継後の設備投資など、幅広い費用が補助対象になります。

補助金の内容や申請スケジュールは年度ごとに変わることがあるため、最新情報は中小企業庁の公式サイトや事業承継・引継ぎ支援センターで確認することをおすすめします。

サーチファンドで経営者を目指すなら日本サーチファンド(J-Search)

日本サーチファンド(J-Search)は、経営者を目指す個人が地方企業の承継に挑戦するための環境を整えた、アクセラレータ型のサーチファンドです。サーチ活動から承継後の経営まで一貫したサポートを提供しており、経営経験が少ない方でも着実に経営者への道を歩める仕組みが整っています。

地域金融機関が持つ豊富な企業情報を活かしたマッチング

日本サーチファンドの大きな特徴の一つが、地域金融機関との連携によるマッチングの仕組みです。地域金融機関は、地域の中小企業と長年にわたって取引を続けており、財務状況や経営者の人柄、地域での評判など、表に出にくい企業情報を豊富に持っています。

こうした情報を活かしたマッチングにより、一般的なM&A仲介では出会いにくい企業も含め、より条件に合った承継先と出会える可能性が広がります。

サーチ活動から承継後の経営まで一貫した支援

日本サーチファンドでは、承継先企業の探索(サーチ活動)から始まり、デュー・ディリジェンス・交渉・契約・承継後の成長支援まで、一連のプロセスを通じてサポートを受けられます。承継後も専門家チームがサポートを続けるため、経営課題をひとりで抱え込まずに取り組める環境が整っています。

サーチ活動の段階から業界分析・企業評価・資金調達の考え方など実践的な知識を身につけながら進められるため、経営経験が少ない方でも着実にステップを踏んで挑戦できます。

日本M&Aセンターグループのリソースやノウハウを活用したPMI支援

日本サーチファンド(J-Search)は日本M&Aセンターグループの一員であり、グループが長年培ってきたM&Aのノウハウやネットワークを活用できる点も大きな強みです。特に承継後の経営統合プロセス(PMI)においては、グループ内の日本PMIコンサルティングによる専門的なサポートを受けられます。

事業計画の策定や100日プランの作成・実行支援など、承継直後の課題に対して豊富な実績を持つ専門家チームが伴走可能なため、一つひとつ着実に乗り越えやすくなります。

地方の事業承継に関するよくある質問

ここでは、地方での事業承継を検討している方からよく寄せられる疑問に回答します。

地方企業の事業承継にはどれくらいの期間がかかるか?

事業承継にかかる期間は、承継方法や企業の状況によって異なります。中小企業庁のガイドラインでも早期着手の重要性が強調されており、「気づいたときが準備の始め時」という意識を持つことが大切です。

特に地方企業の場合、地域関係者への引き継ぎや信頼関係の構築に時間がかかるケースも多いため、余裕を持ったスケジュールで進めることが承継成功のポイントになります。

参考:中小企業庁 事業承継ガイドライン

経営未経験でも地方企業の後継者になれるか?

経営経験がなくても、地方企業の後継者になることは可能です。サーチファンドを活用した事業承継では、会社員や専門職出身の方が初めて経営者として地方企業を引き継ぐケースが増えています。

日本サーチファンドでは、未経験からでも専門家のサポートを受けながら段階的に経営スキルを身につけられる環境が整っているため、「経営は未経験だが挑戦したい」という方もぜひ一度ご相談ください。

地方に住んでいなくても事業承継はできるか?

地方に住んでいなくても、事業承継自体を進めることは可能です。サーチ活動の段階では居住地を問わず調査や交渉を進めることができますが、承継後は現地に腰を据えて経営に取り組む覚悟が求められます。

実際に移住・転居を伴う形で承継するケースが多く、地方への移住支援制度と組み合わせて活用する方もいます。

まとめ | 地方での事業承継はサーチャーにとって大きなチャンス

地方の中小企業では後継者不足が深刻化しており、外部から経営を引き継ぐ人材へのニーズはこれまで以上に高まっています。親族内承継・従業員承継・M&A・サーチファンドといった選択肢の中から、自分のキャリアや強みに合った方法を選ぶことが、承継成功への第一歩となります。

地方企業を引き継ぐ際は、事業の将来性の見極め・従業員や取引先との関係構築・地域コミュニティへの参加など、地方特有の視点を持って取り組むことが大切です。事業承継・引継ぎ支援センターや補助金といった公的支援も活用しながら、着実に準備を進めていきましょう。

「いつかは経営者に」という思いがある方は、ぜひ日本サーチファンドへお気軽にご相談ください。サーチ活動から承継後の経営まで、一緒に歩める環境が整っています。

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【免責事項】
本記事は、サーチファンドおよび事業承継に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の投資、金融商品、M&A取引、事業活動等を推奨・保証するものではありません。記載されている内容は一般的な傾向・事例を紹介したものであり、成果や成功、資金調達の実現、事業承継の成立を約束するものではありません。

サーチファンドの活動および企業承継には、個人の経験、地域の事情、企業の状況、支援機関の体制などによって結果が大きく異なる場合があります。また、事業承継や投資にはリスクが伴い、必ずしも希望する案件が見つかるとは限りません。

本記事の情報は正確性・完全性を保証するものではなく、将来の結果を示唆・保証するものでもありません。具体的な検討や意思決定を行う際には、必ず専門家(金融機関、法律・税務・会計の専門家等)にご相談ください。